失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
毎日が悪夢のような拷問となった
苦しくて何も手につかなかった
ただ学校とバイトには
休まず行った
なにかに気を取られていなければ
一日を過ごせなかった
じっとしていたら
気が狂いそうだったから
警察に頼れないことを知った両親は
すぐに興信所に捜索を依頼した
父も母もじっとしていられなかった
母はまた不眠症になった
父も酒の量が増えていた
実家は暗く沈痛な気持ちに満たされ
家の電話や互いの携帯がなるたびに
異常な緊張が走り
それが通話やメールであっても
電話の元に飛びついて
そしてそのたびに
変わらない絶望を確認した
僕はパニックの発作が完全に再発し
母の心配をただ増幅した
少しして僕は
実家を離れ
兄のアパートで過ごすようになった
どうしても
手がかりを見つけたかった