失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「事故直後に意識があったのが幸い

してちょっとコネを使った…警察に

腐れ縁の友人がいるんだが…それの

はからいで私は死亡したということ

になっている…もっと違うやり方で

事件をもみ消して欲しかったんだが

私の事故が友人の関係してるヤマと

つながりがあったらしくてね…私も

生きていたら今頃刑務所の中だ…司

法取り引きで今までの私の集めてき

た極秘情報は友人に没収だ…足首は

神に召し上げられ…情報はお上に…

センスの悪い冗談だ」



彼は淡々と事件を語った

まるで他人事のように

「寒いだろう…入った方がいい」

彼は僕をさりげなく気遣った



Tシャツを脱いでタオル掛けに掛け

浴槽の低い縁ををまたぎ

温かい湯に浸かった

「うっ…」

脇腹の傷が湯にしみて疼いた





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