失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】








「守秘義務というものがあるからね

君の言ったことは絶対に外部にもら

すことはない…だから手がかりにな

るようなことがあったら言って貰わ

なければ…こちらも的確な調査の

チャンスを失うことになる」


彼は少し表情を緩めた


「無理に…というのはお願いできな

いけど…こちらは少なくともプロだ

みんな人には言えないような秘密も

あるのはよくわかってるし…そんな

秘密に驚くような世間知らずでもな

し…驚くような歳でもないしね」


彼はまたパソコンに向き直り

作業を再開した


「ああ…ハードディスクがはずされ

てる」

「えっ?」

「困ったな…お兄さんが持って行っ

たのか…それとも他の誰かが外した

のか…」

「そんなことあるんですか?」

「ハードを持ち出す家出人は多い」

「復元ってできるんですか」

「ほぼ無理だね…とりあえずここは

ダメもとで業者に出すしかない…

あとは職場のパソコン頼みだね

君の実家のパソコンは情報が少ない

…少な過ぎるくらいだ」


そして僕に訊いた


「梱包して車に積んでおきたいが良

いかな」

「お願いします」


また手がかりが消えた

僕は脱力してベッドの上に

座り込んだ










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