失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



僕はあの時の不良神父との出会いを

彼に話した

聞き終わって彼は神妙な顔で言った

「私のせいか…皮肉な話だ」

「あなたが兄貴を陥れなきゃ僕も神

に祈るなんて思いもしなかったって

思うよ」

彼は笑った

「君に祈られて私が助かったのは…

あはははは…なんという伏線だ…こ

ういう自業自得もありか…」

彼はしばらく笑っていたが

急に感慨深いような言い方をした

「だがその不良神父にも君の苛酷な

運命は受けとめられなかった…とい

うわけか…まあ…そうだろう…確か

にその神父はまっとうだ…君の期待

が高過ぎたんだな…君が救われるに

はさらにその上を行く大胆な神学の

解釈が必要だ…それをカトリック教

会に期待したら教会が可哀想だ…そ

んな破天荒な神父…破門される」



それが

あなた…だ



「それが…あなた…なんだ」

「え?」

彼は不意を突かれたように

聞き返した

「僕を受けとめてくれたのは神父じ

ゃない…ましてやあの男でもない…

あなたなんだ」



彼は少し茫然とした顔で

僕を見詰めていた

その顔が無垢な少年のようで

僕は彼のそんな顔を初めて見た






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