失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
いつも通っている心療内科に
受診する
パニック障害の再発で
中学高校の頃通っていた
心療内科への道を
また歩いている
眠れないことを訴えた
怖くて
眠れません
死んだように眠れる
薬を
下さい
睡眠導入剤と
鬱病の薬が増えた
僕は鬱なんだ…
否定はしない
医師は兄の失踪のことを
知っている
だからいまうちの家族は
みんな鬱だ
結局僕が心療内科に通うのは
兄が死んでしまう
と言う怖れ
それ以外にはない
中学の頃から
全然変わらないその理由
正確に発作は復活する
そうだ
生きる意味が失われたら
どうやって耐えればいい?