失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
リハビリが始まり
僕は自分のしたことの現実を知った
幸いなことに運動神経は問題がなく
痛みはあったが筋肉までは損傷して
いなかった
だが包帯を取る時に違和感があった
左手の指先の感覚がない
特に親指と人差し指の感覚が
まるで厚い手袋をはめているような
遠い感覚しかなかった
親指と人差し指の腹を
互いにこすり合わせてみた
正座して足が痺れたときのように
指先がそこに在る位置感覚まで
麻痺していた
傷口や浮腫に神経が圧迫されてるか
感覚神経だけが傷ついていて
まだ回復してないのだろう
と担当医は分析した
念のためすぐ神経外科にまわすよ
と担当医は僕に言ってくれた
神経外科では指の神経は切断は
されていない…と言われた
神経の再生には1ヵ月くらいかかる
傷がついてる可能性はあるが
麻痺はだんだん良くなるはず…と
僕の麻痺は彼にも報告が行き
"心配ないよ"と慰めてくれた
彼の左足は感覚どころか
全部切り取られているのに…
それを思うと麻痺が治らないことも
受け入れなければと思った
それでもいつも使う大事な指が
感覚を失っているのは不安だった