失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「いろいろあって…ひどいことされ

たけど…どっかで僕は…自業自得だ

なって…思ってる…それより大丈夫

じゃないのは兄貴のことで…まだな

んの手掛かりもつかんでなくて…で

も今回の僕の事件で兄貴の失踪のこ

とも警察が調べてくれることになっ

てる…だから僕の災難も無駄じゃな

いって…どこかで思える」

ヤツは複雑な顔をして言った

「お前…タフだな」

「全然タフじゃないよ…ほら…」

僕は両腕を掛け布団から出した

「なんなんだ!?…その包帯はっ」

ヤツは驚いて叫んだ

「自殺…未遂…みたいで…記憶がさ

ところどころないんだよね…自分で

切ったのは覚えてないんだ…死にた

いって思ったまでは…なんとか思い

出したんだけど…」

「お前のお母さんが浮き沈みが激し

い…って言ってたのはこれか」

ヤツは痛そうな顔をした

「覚醒剤のフラッシュバックってい

うのがあって…クスリ入れてもいな

いのに急に入れた時の状態になるら

しいんだ…それと事件のトラウマが

噛み合ってやっちゃったらしい」

「マジか…目が離せない状態じゃね

ぇかよ」

ヤツはマジで驚いていた

「指が固まっててさ…今リハビリ中

なんだ」

「それでか」

ヤツは思い出したように

立て掛けたギターに手を伸ばした





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