失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

ペイン・コントロール





前から良く知ってる

僕には忍耐ということが出来ない

いつもどこかで破綻する

過度な電流が流れると

ぶちきれるヒューズとか

バチンと落ちるブレーカーみたいに




父親に似たのか

結局酒を飲み始めていた

ただ父親ほど僕は強いわけじゃなく

それが反って薬物としての酒の

効力を発揮してくれることとなった




僕のブレーカーが落ちた理由は

最初の興信所の契約を

父が打ち切った

それが直接のキッカケだった




仕事で忙しい父親と

あまり体調の良くない母の代わりに

興信所と連絡したり

情報のやり取りをするのは

だいたい僕の役目だった

兄の部屋を調べながら

あの日一緒にパソコンを運んだ

例の調査員は兄の事件の

メインの担当だったので

兄の仕事場である大学の研究室や

兄が通勤にいつも使っていた

最寄り駅の周辺の目撃者捜しとか
  
僕は時間があるときには

連絡をもらい同行することを

希望していた

彼も僕も手掛かりを渇望していたし

僕がじっとしていることが

一切できなかったから

兄の行動範囲をわかって

案内出来るのは家族の中では

僕しかいない

調査には当然ながら料金も経費も

かなり掛かる

出来ることは僕がやらないと

興信所の料金だけでみるみるうちに

家の蓄えが取り崩されていった






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