失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



少し落ち着いた僕はソファーから

身体を起こして父と話した

「キズは良いのか?」

「うん…もう治りかけてるし」

「大変だったな…」

「ごめん…心配かけて」

「まあ…俺は修羅場は慣れてるしな

母さんを海で助けた時の方が大変だ

ったぜ…俺も溺れかけた」

「僕の心配は…あまりないんだ」

また父親から軽く見られてるような

淋しい気分になり始めた

興信所を勝手に変えられた

あの時のトラウマに刺さる

心配されたいのかされたくないのか

父はそんな僕の顔を見て笑った

「そりゃ俺の息子だからな…お前は

死なねーよ…寸止めで助かる…俺も

そうだったしな…まぁ助けに行けな

いのがツラかったけどな」

父はそんなことを言った



そんな信頼があったのか

放ったらかされているとか

ないがしろにされたように感じた

あの時の絶望は…誤解?



「俺だってグレてた頃はシンナーく

らい仲間と吸ってたしよ…一本通っ

ているものがあればやめるもやるも

自由自在だろ」

父は懐かしそうな顔で

そんな大胆なことを言った





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