失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



そう

こんなふうに

冬の寒い教会で

僕と兄が

あなたの幸せを祈ったんだよ

あなたの罪を知りながら兄は

あなたのしたことを許した



いま僕とあなたが

晩春の宮で

兄の無事を願い

再会を祈る

許された罪を償うために

あなたは僕を愛しながら

恋敵の兄を見つけ出そうとしてる

そうとしか僕には思えない



1ミリの狂いもない

正確な

因果応報の図式

僕が垣間見る宇宙という法則が

またここに姿を顕して見せる

あの時は光だった

今度は

闇が導くんだね

闇を輝かせるために




「一緒に祈って欲しい…僕と兄貴は

あの教会であなたの幸せを二人で祈

ったんだ…兄貴はあなたが自分の父

親の恋人だと知ってた…そして自分

を陥れたことも…それでも兄貴はあ

なたを許してた…」

彼は静止した





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