失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「それだから君は自分を追い詰める

んだ…君はいまこんな状態で独りで

耐えられるのか?…耐えられなくて

酒に溺れヤク中になりそれにつけこ

まれて売り飛ばされて殺されかけた

んだろう?…まだ私と浮気している

方が健全だし兄さんも経緯を知れば

納得するはずだ…少なくともヤク中

で男娼の君を見るよりまだマシだろ

う…違うか?」


僕はぐうの音も出ずに掛け布団の

端をつかんで下を向いたまま

唇を噛みしめていた



そうだよ

その通りだよ

僕は弱過ぎる

独りで耐え抜くなんて

無理だ


下を向いたまま僕は彼に言った

「弱すぎるんだよ…僕は…人を巻き

込んで…泣いて…独りで耐えるなん

てできないんだ…」


彼はそれを聞いて

ゆっくり僕に尋ねた

「君の兄さんが君を抱いた時…君は

巻き込まれたと思ったか?」

思うわけ…ない

僕は首を横に振った

「血を分けた兄弟なのに?…男同士

なのに?」

尚も彼はたたみかけた





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