失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
寮への引っ越しは所長の読み通り
その1ヶ月後だった
不安だったが一旦は実家に帰り
引っ越しの準備に2~3日追われた
その中で兄のアパートに荷物を
取りに行った
よく着てた服やよく聴くCD
本とスコア…
そんなものだけだが
部屋に久しぶりに入る
着たまま放置されてた服が
畳まれて積まれていた
きっと母が畳んだんだろう
ベッドはきちんと整っていたが
シーツや枕カバーは洗濯していない
母がどんな思いでこの部屋を
片付けたかを想像したくなかった
とりあえず服をまとめる
母の仕事を増やしたくないので
いつも兄と行ってた
近所にあるコインランドリーに
シーツやジーパンやスエットなどを
洗濯しに行こうと思った
梅雨入りしていたが
今日は少し晴れ間があった
兄と二人でよく歩いた道を
独りで洗濯物を担いで歩いた