失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「…いい…けど…なに?」

いきなりパニクりそうなくらいの

激しい恐怖感に襲われた

親父…なんなんだよ…



「お前さ…あの事件と…兄ちゃんの

親父さんとは…関係ないんだろ?」

「……へ?」



喉からものすごくマヌケな声が出た

「へ?ってなんだよへ?って」

あまりのすっぽ抜けた僕の声に

質問した親父のほうが

逆に拍子抜けしたみたいだった



「…なんだよぉ…なんか大変なこと

聞かれるかと思ったじゃん!」

まったく関係ない人の出現に

緊張の糸が一気にぶち切れた

「ああぁ…緊張した…心臓に悪いよ

…関係あるもないもないよ…無関係

の外だって…」

「ああ…そっか…じゃあいいんだ」

父親はあっけにとられるほどの

軽い感じで質問を終わろうとした

「ちょ…ちょっと待った…なんでそ

んなこと聞いたの?」

父は口をへの字に曲げて言った

「母さんが気にしてるからよ…本人

はなにも言わねぇけどな…」

「そうか…母さん自分のせいだって

思ってんのか…」

僕が呟くと

親父が困ったような顔で言った

「呪い…なんだと…俺と一緒になる

前は母さんそれでよく半狂乱になっ

てたもんな…今はそんなこと言わね

ぇけど…どっかで引っ掛かってるん

だろうなぁいつも…そんな気がして

な…お前には悪いが訊いておこうと

思ってよ」

それは少し悲しげに聞こえた





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