失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



呪い

そうだ

確かにそう思ってた

あの日までは



だけどあのとき…

兄貴の親父さんと実際に会ったとき

僕は現実に打ちのめされた

呪いは彼の身体に返り

死を前にした彼は贖罪の祈りの

中にいた



兄の父親の呪いは

その悪魔のような彼の恋人

…あの人に受け継がれたと思ったが

それもあの日…彼も死を前にして

そしてあんなことに…




「あっ…」

そのとき僕は急に思い出した

それは自分が死にかけたあのときの



「なんだ?…いきなり声だして」

親父が訊いてきた

「僕さ…あの事件の終わりの頃にさ

…臨死体験…ってのしたんだよね」

父親はびっくりしたように

ハンドルを握りながら

チラッと僕を見た

「臨死体験?なんだそりゃ?」

「ほら…あるじゃん…死にかけた人

がさ…花畑を歩いてたとかさ…トン

ネルを抜けたら光の世界だったとか

死んだおばあちゃんがいたとか…」

父は眉をしかめて

「まあなぁ…そう言う話はあるけど

なぁ」

と答えた





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