失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「君が言うか?それを」
彼はあきれたように笑った
そしてどんどん不機嫌になる僕に
後ろから首に腕を絡ませた
「兄さんも私ももういないはずの彼
に取られて妬いてるのか?」
また図星…だよ
「そうだよ…いつも僕の存在より前
にあいつがいて…僕はあいつのやっ
たことの始末をして生きてるみたい
なもんじゃないか…」
切なくて吐きそうになる
ずっと前から感じていても
言葉にならなかったことが
言葉になって噴き出してくる
「なにもかも…なにもかもだ…全部
あいつが始めたんだ…あいつの企ん
だイカれた陰謀のせいで母さんは騙
されて身代わりにされて…」
「身代わり?」
彼はいぶかしそうに訊いた
「なんなんだ…それは」
僕はもう止まらなかった
彼の手を振りほどいて
僕は振り向きざまに彼に言った