失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「…それは…やめてくれ…何度言わ
せるんだ…君にまで死なれたら私は
立ち直れそうにない」
囁くような彼の言葉を聞いて
僕は震えた
「怖いんだ…あなたが傷つくのが怖
くて仕方ないんだ…僕はいつも余計
なことをして誰かを傷つける…頭が
悪いから先のことを考えられないん
だ…こんなこと言ってるのに僕は兄
貴の親父に嫉妬してるんだ…あなた
の中にまだ彼が居るのが耐えられな
いんだよ…バカなんだよ…僕の中に
は同じように兄貴がいて…あなたは
それでいつも苦しんでるのに僕は同
じことに耐えられないんだよ…頭が
おかしいんだ…またクスリ漬けにし
て殺しちゃった方がいいんだよ…あ
なたはもう僕たちの血に関わらない
方がいいんだ…これは終わらせなき
ゃなんない…絶対に…絶たなきゃな
らない…それを終わらせるために僕
は…産まれてきたんだよ…そうに決
まってる…そうじゃなきゃ…こんな
人生…ただの地獄じゃないか!」
「やめろ!」
彼が叫んでいた
「もういい…わかった…君を解放す
る…彼の呪いから君を解き放つ…だ
から死ぬな!」