失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



彼は僕を抱きしめていた



ああ…愛してる

愛してるよ

あなたを愛してる

ごめんなさい

ごめんなさい



「あああぁぁぁ!」

喉を引き裂くように嗚咽



愛し合いたい

あなたを受けとめたい

あなたに身も心も預けてしまいたい



それができたら

それができたなら…



「愛…してるん…だ…あなたを傷つ

けたくな…い…」

膝を抱え彼に顔を埋めて泣く僕に

彼は強い口調で言った

「苦しむな…ダメだ…また君は発作

的に死のうとする…私は君に借りが

ある…返せないくらいの借りだ…君

は私を苦しめていいんだ…わかった

か?…君の兄さんを陥れたことを思

い出せ…大丈夫だ…憎しみさえ湧い

てくるはずだ…君はまだ私を憎んで

いるはずだ…私を利用するんだ…捨

てたいなら捨てればいい」

彼は僕の顔を見た

「これはもう解決した取り引きだと

思ってたのだが…君はいつもこの罪

悪感に引き戻される…なぜかな…」

彼は僕に問いかけた

僕から答えを引き出すみたいに





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