失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
ランチパスタはそんなに多くなくて
パンをおかわりした
そんな僕を見て母は安心した顔で
そんな安心した母を見て僕が
ホッとしていたりして…
寮の話や体調を訊かれたりして
しばらくすると皿が片付けられて
ラストのコーヒーが運ばれてきた
「お父さんから聞いて…びっくりし
ちゃった…あの世に行って来たって
そんなことあったんだ…あなたの担
当の捜査官のかたからはそんな話は
聞かなかったから…」
確かにその話はこの前父に話すまで
忘れていた話だったが
確か事情聴取では話したはずだった
親を心配させないための彼の気遣い
なんだろうか?
「親父がさ…心配してたから…話し
たんだよ…母さんが自分を責めてる
のをわかってたみたいだよ…」
母は泣きそうな顔になった
「今回の事件も…お兄ちゃんの失踪
も…どっかであの人が関係してるか
もって…夜眠れなくてぐるぐる考え
てるとその疑いが不意に出てきてね
…もうこの世に居ないんだからって
思い直してはまた浮かんできて…そ
の繰り返しだった…」
そう言うと母は息をついた