失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



母のその話を僕は

黙って聞いてるしか出来なかったが

心のわだかまりを吐き出すように

母は話を続けていた



「…なんか…あの話って…びっくり

して…同時にものすごくホッとして

それからね…なんかすごく頭に来て

なんかとても複雑でメチャクチャな

気分でね…涙は止まらないしね…」

母はフッと笑った

「いま思い出すと自分のことが可笑

しいわね…」

「可笑しく…ないよ」

僕は思わずフォローした

「…ありがと…優しいな」

僕はそんなことを言われて

恥ずかしくなって下を向いた

照れ隠しにコーヒーを飲んだ

「…でもね」

母は何かまた言いたげな顔になった

「あなたの事件は多分関係ない…あ

の人とはね…でも…」

「でも…?」

僕は言いにくそうな母を促した

「…でも…お兄ちゃんは…」

「なにか知ってるの?」

僕は思わず聞き返した





< 256 / 514 >

この作品をシェア

pagetop