失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
ジャーナリスト…
そういえばあの人は新聞記者だった
「どんな…ジャーナリストだったの
?…記者だったよね」
母は困ったように僕に釘をさした
「あの人の人格とかやったこととは
関係なく言うわよ…ジャーナリスト
としては…天職だったわ…あの人を
許すことはないし思い出すのも苦痛
だけど…」
母は悲しげな顔で答えた
「社会に対する強い強い怒り…かな
あの人はいつも体制と戦ってた…そ
れが若い世間知らずの私にはとても
まぶしく見えたのね…裏の情報には
ほんとに詳しかったし…彼の記事が
新聞の一面に出たことさえあったの
その時はテレビも新聞も…マスコミ
中が彼のすっぱ抜いたスクープで世
間を沸かせたのよ…あなたの生まれ
る前の事件だけどね」
裏の…情報
「裏って…政界のスクープとか?」
「ええ…汚職とか…政治家と官僚の
癒着とか…警察のスキャンダルとか
もう…いろいろとね」
「なんでそんなに詳しく知ってたの
かな…?」
僕が直球の質問をすると
母は残念そうな顔で答えた