失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「それでさ…母さんの言う気になる
ことって…そのヤバい奴らのことな
の?」
僕が話を戻すと母はうなづいた
「遺品…って…お兄ちゃんから見せ
てもらったことある?」
母が僕に聞いてきた
そういえばそんな話
…聞いたことない
「僕はなんにも聞いてないよ…今日
初めて知ったし…形見分けのことな
んて」
「えっ?…知らなかったの?…本当
に?」
母は僕以上に驚いていた
「お兄ちゃんはあなたには見せてた
のかと母さん思ってた」
「知らないよ…そんなものあるの知
ってたら…探して興信所に提出して
るよ」
「あぁ…そうよね…」
母はとてもがっかりした様子だった
「私ね…そのことに気づいてから探
したのよ…何度も…でもお兄ちゃん
の部屋にもうちにも…どこにも見当
たらないのよ…心の整理で全部捨て
ちゃったのかも知れないし…なんて
言うのかな?フロッピーとかって…
そういうのあるじゃない?…私は詳
しくないからわからないけど…パソ
コンだと資料って小さくなるんでし
ょ?…私が見つけられないだけなの
かも知れないから…あなたに聞こう
と思ってたんだけど…知らなかった
んだ…」