失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
朝はいつもより早く目が覚めた
手探りで枕元の携帯を取ると
メールの着信がピカピカしていた
急いで中を見ると
彼からだった
『おはようございます。体調はどうですか? 夕方の5時にはそちらに車で迎えに行けます。忙しいので、一緒に夕食を取りながらの相談で良いでしょうか? 都合が良くても悪くても午前中にメールを下さい。良ければ所長には外出する旨こちらから伝えます。では返信お願いします。』
ホッとしたせいか
朝から目が潤む
昨日母から聞いた兄の遺品のことで
かなり追い詰められていることに
それで気づく
こちらからメールしたことで
彼も僕がいつもと違うことを
察してくれたのか
対応が早すぎて夢のような気持ちだ
忙しいのに予定こじあけてくれた
きっとそうなんだろう…
すぐ返信を打つ
『返信ありがとうございます。予定はありませんので、今日の5時からお待ちしてます。忙しいのに申し訳ありません。体調はまあまあですが、精神状態はあまりよくないようです。でも相談出来る人がいると思うと心強いです。では、本日よろしくお願いします。』