失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「兄さんが黙ってたことがそこまで
君をダメにするんだな」
彼はチラッと僕の方を見た
「それは君への愛かも知れないのに
…嫉妬は冷静な判断力を狂わせるぞ
君は待つべきだ…私が言うのもなん
だが」
彼に引かれた気がして
うっすらと寒くなった
だめ…だめだよ
手を離さないで
僕は…今なら…あなたのモノになる
それをわかってるんでしょう?
なのに…
「いまの君をモノにしても私が苦し
むだけだ…それはもう御免だ」
わかって…る
彼はわかってるのだ
「わかって…るんだね…ごめん…で
も今日は無理だ…僕は冷静になれる
方法なんてわからない」
そうだ…
冷静に考えたその結論は
どんな裏切りより僕には残酷
「待つべきだ…結論はいずれ出る」
……!
「それ…どういうこと?」
「君にはまだ言える段階じゃない」
「どういうこと!?」
彼はとても面倒臭そうな顔をした