失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「だから言いたくなかったんだがな

君がこんなになるから言わざるを得

なくなった」

彼はうんざりした様子で答えた

「情報…つかんだの?」

「まあな…だが確証はない…本庁の

データベースを使えそうにないから

な…何しろ隠蔽しているのが身内と

きてる」

「やっぱり…そうなの?…でもなん

で…なんで兄貴がそんなことに…」

それが最大の謎だった

彼はしばらく黙っていた



「今はなんとも言えない…知ること

で不幸になるかも知れないし気持ち

にケリがつくのかも知れない…」

「そんなことわかってる!…でも知ら

ないってことが僕にはもう耐えられ

ないんだ…わかるでしょ?」

彼は黙っていた

「僕はサディストに殺されかけた時

にあの世で兄貴の親父に会った…彼

はまだ死ぬなと言って僕をこの世に

押し戻した」


彼の顔が少し険しくなった

「僕は知らなくちゃならない…なん

であの時死ななかったのか…なんで

あなたが助けに来てくれたのか」


僕は彼を見つめた


「辛くても見なきゃならないことが

あるんだ…僕はそこに向かって歩か

されてる…どんなに泣き言を言って

も頭が狂っても…止めてはくれない

んだ」





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