失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「静かだな…」

狂宴が終わったあと彼は

ベッドの中で僕を抱き締めて

そう呟いた

「これでも私はこの上なく幸福なん

だ…いまこの瞬間が」

彼の顔を見上げると

僕を見てゆっくり微笑んだ


「この世は無常だ…すべては保証の

ないただの偶然…もしくは誰も抗え

ない運命…私は抵抗し続けたから良

くわかる…変えることは出来ない」

僕は黙ってうなづいた

「この瞬間の幸福から踏み出すのが

とても怖くなる…無常が私を待って

いる…君にもだ…私の救いは君がそ

れを知っているということだ」

彼は笑った

「君は私よりも早くそれを悟ってい

るんだな」

「違うよ…」

僕は彼の胸に頭を預けて言った

「僕は…無力なんだ…それだけ」

「それを知っているなら同じことだ

…だから君は自分の力に頼らない

運命を受け入れる…私すら受け入れ

た…バカな子だ」

バカな子と言った唇が急に降下して

僕の唇をふさいだ

「んっ…」

甘さが脳を直撃する

脳震盪みたいなキスに

僕は耐えきれず喘いだ





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