失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
彼はどこからその予感を
兄の情報として得たのだろう?
以前言っていた兄の父親の線なのか
それとも『身内』の線なのか…
確信のない話を聞くべくもなく
遺品の件も関わりがあるのか
ないのか
上からの圧力のある中での捜査に
僕があれこれ訊くのもためらわれた
だが…
きっと事態は動く
まるで途中で止めることのできない
ドミノ倒しみたいにそれは
次々と連鎖していくのだろうか
そして
彼は組織の中でどうなるのだろうか
そうじゃなくても微妙な立場なのに
例の組織内の"知人"には
もう頼れないのだろうか?
(孤独でも…生きていける…)
僕が兄と再会し
兄を選ぶから?
つまり兄は…失踪は
自分の意志ではない
もしかして
そういう…ことなのか
それを予期していたから
彼は…