失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
幽霊からの伝言
雨の中独り
今日という日を迎えた
兄のいなくなったその日を
1年という月日
1年という重さ
すべてが灰色になった1年の記憶
その中でひとつだけ
色を持つあの人との再会の映像
だがそのたったひとつの色も
刹那を彩る夕焼けのように
色を変え
闇に飲み込まれていくように
感じた
7月を僕は二度と受け入れられない
ように思えた
この人生も
だが
もうそれすらも
僕には許されてはいなかった