失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
だが所長より早く
刑事が運転席に戻って来た
所長が車の窓を拳でドンドン叩く
なにが起きたのだろう?
刑事は窓を開け所長に言った
「時間がありません…とにかく先ほ
ど申し上げたようにして下さい…」
「どういうことか説明して下さい」
所長が食い下がる
いつもの様子と違う
なにかマズいことが起きてる…?
「いま詳しく説明している暇があり
ませんのでね…彼を守らなければな
らないんで…身内ながら…私は公安
のものです…あとから来る連中は県
警だがそちらに彼を引き渡すわけに
いかないんですよ…とにかく彼は今
無断外出でいないとおっしゃって頂
ければ良いです…私のことには一切
触れないで下さい…内部不正の摘発
がかかってるんで…彼は巻き込まれ
てしまっているので保護が必要です
…この情報は他言無用ですよ…あな
たも標的になりたくなければね」
刑事は窓を閉めた
僕たちの車が走り去るのを
所長は無言で見つめていた