失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「あの…僕の担当官は知ってるんで
すか?」
急速に不安が増大していくのを
押さえつけながら僕は刑事に尋ねた
「もちろんだ…だから保護を頼まれ
たんだ…急なことですまないが対象
が予想外の動きをしたものだからね
…少々目的先行になった…所長さん
には申し訳なかったな」
そして刑事は僕に警察手帳を見せた
《公安》
あまりこういうことに詳しくない
だが公安って
刑事ドラマでしか見たことがない
警察と公安はいつも仲が悪いような
筋書きだった気がするけど…
「あの…さっきの電話をくれたのは
刑事さんじゃないんですか?」
「いや…私じゃないよ…県警だ…正
確には県警の名前を使っている警察
…まあとりあえずあまり現状は話せ
ないから質問には答えられないこと
が多い…申し訳ないが知ったことは
口外はしないこと…これは約束して
もらいたい…ことがまだ終わってい
ないからね…少し経ってから報道に
も載るだろうからそれを見てくれ」
ああ…なんてことだ
とうとう巻き込まれた
これは僕の事件?
それとも兄貴の?
事態が動き出した可能性
でもこれからどうなるのか
まったく理解不能
この人が敵か味方かさえ