失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
着いたのは…マンション…だった
またか
悪夢のようだ
覚めない堂々巡りの夢?
監禁の記憶がフラッシュバックした
マズい…
本気でパニックになりそうだ
「警察署とかじゃないんですか?」
額の冷や汗を手の甲でぬぐう
「ああ…居場所がわかっちゃうだろ
う?…ここは身に危険がある被害者
とか裁判の証人とかの一時退避する
公安のシェルターだから大丈夫だよ
県警も知らない」
そんな場所があるのか…
説明されて少し持ちこたえるが
ドラマみたいで現実感がなくなる
元々ない現実感なのに
それが更に希薄になった
マンションの前の駐車場に車を止め
公安の庶務さんは僕を連れて
オートロックの前に立つと
部屋番号をメモを見ながら押した
中に誰か居るんだ…
誰もいなければ大抵鍵を差して回す
ここもそうなってる
中に彼が居て欲しい
そう願いながら僕は促されるまま
庶務さんとエレベーターに乗った