失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「コーヒー飲むかな?」
その男性が僕に聞いた
この人は庶務じゃないようだが
「あ…はい…すみません」
男性は立ち上がりキッチンに消えた
立つと背が高いのがわかった
キッチンから音がして彼が戻ると
コンビニのサンドイッチと
コーヒーがトレイに乗せられて
僕の前に置かれた
「昼飯の替わりだ…よかったら食べ
るといい」
「あ…すみません…いただきます」
ホントに保護されてる…のかも
食べ物をもらえると少し警戒心が
弛むような気がした
野良猫みたいだ
「そろそろ君の担当官が来る」
男性はソファーに深く掛け直した
「そうなんですか!?」
僕は思わず口走った
「来なければならない…というべき
だろうな」
男性は変なことを言った
「彼とはクサレ縁でね…いろいろと
あるんだよ…」
もしかして…
「あの…それって…」
「ああ…聞いてるかな?彼から私の
ことは…悪口だろうけどね」
そう言うと男性は苦笑した