失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「公安がこれ以上関わるわけにもい
かない…ということだ…私は目星は
ついている…だがそれも公の捜査の
結論ではない…ただ単に情報が部外
者の私の前を通りすぎていっただけ
だからな…あれのやらかした尻拭い
も含めて私はこの件に関してはボラ
ンティアみたいなもんだよ…しかも
内緒のね…私がもみ消せることにも
限度があるしな…そろそろ終わりに
したい…良いキッカケだよ」
「兄の居場所…教えて下さい」
「今はダメだな」
「なんでですか!」
僕は声を荒げた
「等価交換だよ…あの女が若造の私
に教えてくれた貴重な教訓だ」
「僕に何を出せと言うんですか?
切り札なんか何もないですよ!」
「いいや!」
その人の威圧的な否定に
僕は一瞬ビクッとした
「君はあれの心をつかんでいる…君
自身が私の切り札だ」
その時インターホンが鳴った
「噂をすれば…あれがやって来た」
白黒のモニターに彼の姿があった