失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「まあ…お前が撒いたタネだからな
当然の報いだ…反省しろ」
「そっくりそのままその言葉をお返
しする…責任は取ってもらう」
さっきから聞いていても
会話の意味がさっぱりわからない
意味はわからないけど
ひとつだけわかること
この二人は
親子だ
頭の上を飛び交う低い声
この似すぎたトーン
本人達はわかっているのだろうか?
少なくとも父親は
きっと知ってる
彼は気づいているのだろうか?
あの別れた日には
彼は父親は知らないと言った
死にかけた時に父親と知らずに
なぜ助けを求められたのか
想像つかないけど
「…まあいい」
男性は諦めたように口調を変えた
「ただ…今回はボランティアとはい
かないぞ」
男性の言葉にムッとした顔をしたが
彼は開き直ったように答えた
「仕方ない…私も負債を負うのは不
本意だからな…条件を聞こう」
男性は面白そうに笑った