失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「建前はご立派だし事実なんだろう

が…厄介者は目の前から消えろ…ま

あ本音はそんなところなんだろう…

あんたも尻拭いで苦労するのに嫌気

がさしたんだろうな…幽霊の伝言も

時間が経ちすぎて効力が切れたよう

だ…あんたからもあの女からも解放

されて然るべき時なんだろう」

彼は憑き物が落ちたような

へんな脱力感のある声で言った

「あんたの奇策は3年しか持たなか

ったが…おかげでこの子を助け出せ

た…意味はあった…時期も…」

そして彼は僕の顔をチラッと見た

「あんたからの情報をもらおうじゃ

ないか…この子に早く教えてやって

くれないか」




終わる

彼との時間が終わっていく


待って…もう少しだけ

引き裂かれた心が悲鳴をあげる

でも…もう待つことは出来ないんだ

兄に逢わなきゃ

心のもっと深いところで

押し潰されて

血まみれのまま

腐り落ちて狂っていく

そして彼も

自分を見失うくらい苦しみ抜いて…



だから

彼が自分自身と交換してくれた

そのものを

受け取らなくては

いま

ここで






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