失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「特ダネと報酬がありその見返りと
して記者の情報網やタレコミの中で
使えそうなモノを彼女にバックする
上手くやれば記者は女からも信頼さ
れ関係を築く…ヘマをすれば…場合
によっては抹殺もされる」
前に従兄弟が言っていたという
母の言葉を思い出した
『ヤバい奴らとつるんでるから…』
あの時ヤクザとかを想像した僕は
不意に彼の顔が浮かんでいた
いま考えたら年齢が合わない
しかしそれは
彼の母親のことだったのだ
「だがあの女も危ない橋を渡り過ぎ
た…あることをきっかけに警察の内
部にいた彼女の協力者から裏切られ
た…よくあることだがな…飼い犬に
手を噛まれた…しかもそれは嫉妬…
愛憎のもつれ…っていうやつでな」
「ずいぶん他人事みたいに語ってく
れるな」
彼が低く呟いた