失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



彼はしばらく黙っていたが

少しすると重い口を開いた

「多分…そうだ」

「なぜ…?」

「彼と別れる時にファイルを回収し

たから…回収したあとそれは燃やし

た…ファイルの複製を紙で作られて

いたかも知れないがな…だが君の兄

さんの部屋にはなかった…はずだ…

彼が亡くなった後に彼のマンション

にはそれらしきものはなかったのは

確認した…パソコンにも…もちろん

彼が知らない入院中に中を調べた…

君の兄さんの部屋も同じくだ…だが

…あれを残すことが禍根になりこそ

すれ息子にとって遺産になどなり得

ないことなど分かりきっていたはず

だ…私と別れた意味がないだろう?

…だが彼はそれを息子に託した…君

のお母さんは感づいていたが…」



彼はまた黙った



「ああ…そうか…」

彼は不意に目を上げた

「どうしたの?」

彼はなにかを思いついたようだった





< 326 / 514 >

この作品をシェア

pagetop