失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
彼はしばらく黙っていたが
少しすると重い口を開いた
「多分…そうだ」
「なぜ…?」
「彼と別れる時にファイルを回収し
たから…回収したあとそれは燃やし
た…ファイルの複製を紙で作られて
いたかも知れないがな…だが君の兄
さんの部屋にはなかった…はずだ…
彼が亡くなった後に彼のマンション
にはそれらしきものはなかったのは
確認した…パソコンにも…もちろん
彼が知らない入院中に中を調べた…
君の兄さんの部屋も同じくだ…だが
…あれを残すことが禍根になりこそ
すれ息子にとって遺産になどなり得
ないことなど分かりきっていたはず
だ…私と別れた意味がないだろう?
…だが彼はそれを息子に託した…君
のお母さんは感づいていたが…」
彼はまた黙った
「ああ…そうか…」
彼は不意に目を上げた
「どうしたの?」
彼はなにかを思いついたようだった