失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



彼にまたなじられるかと思うと

僕は心の中で少し怯えていた

でもそれは偽善者と言われても

今の僕の中の真実だから

正直に言うしかなかった


「…兄貴の写真…見たら…僕は分か

らなくなっちゃった…何が悪で何が

善なんだって…」




あ…




その瞬間

僕はとても根本的なことに気づいた




そ…の…とおり…だ…

この僕…だって…

兄貴にとって

善なのか

悪なのか




世界が裏返るような衝撃

頭をハンマーで殴られたみたいに




僕は自分だけ

特別だと

思い込んでた…?

僕だけが兄貴を




「……!」

僕は震えながら彼を見上げた

「兄貴にとって…僕…さえ…も…」



いままで…僕は…

疑いもしない…で…





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