失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「今日すぐに答えを出す必要はない
…1ヶ月はここで足止めをくらうだ
ろう…だから互いに納得づくでやる
…だが君だけのためじゃないんだ…
これは私のためでもある」
彼はため息をついた
「こんな関係でクライアントとセラ
ピストをやるなんてセラピーにおい
ては言語道断だ…本来やってはなら
ない関係だ…私は過去君にマインド
コントロールを仕掛けた人間で肉体
関係まである…原則的にこんな関係
ではセラピーは絶対にしてはならな
い…しかし今はそうも言っていられ
ない…言語道断以上の緊急事態だ…
危険極まりない…だがやる…君さえ
良ければだが…?」
彼の言葉には緊迫感があった
これで互いに別れられるんだろうか
心の奥をさらけ出したあとで
兄の愛も
彼の愛も失ってもなお
僕が独り立ち
その心を持ちこたえて
いられるのだろうか?