失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「…親父の気持ちもわかる…僕だっ
て調査が進まないことに焦ってたし
不安で仕方なかった…だからこそ最
初の興信所の担当さんと一緒に精一
杯動いて信頼関係を築いて少しでも
成果を出そうと無理にでも前向きに
努力し続けてたんだよね…張りつめ
てた分…いきなりハシゴを外された
っていうか…言いたくないけど…」
話してるうちにある感情が湧き上が
ってきた
それは言っちゃいけない気がして
言いかけたその言葉に詰まった
「言いたくないけど…なんだ?」
止まった僕を促すために彼が言う
「素直に言った方がいい…誰にぶつ
けているわけじゃないんだ…我々は
レポートを書いている…ありのまま
を報告すべき…だな」
ありのまま
それでもいいなら…
彼の言ってくれた言葉に
僕の罪悪感が少し弛んだ
「じゃあ…言いたくないけど言う」
僕は出しにくい言葉を出すために
息を吸った
「裏切られた…って思った…親父か
らね」
それを聞くと彼は
ほう…と感心したように呟いた
「確かに君らしからぬ激しさだ」