失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「うわああああああぁぁぁぁっ!!」



叫びながら

目が覚めた



「ああっ!ああぁ!うあああぁ!!」

「どうした!…発作か!」

彼が隣ですぐ目を覚ました

「いやだ!…もういやだ!」

全身がガクガクして止まらない

寒気と震えがおおっていた

自分で自分の身体を抱きしめる

この寒気はクスリより凄まじかった

「あああ…いやだ…やめ…て…」

「大丈夫だ…大丈夫だから」

彼も僕の身体をかたく抱いた

「どうしたんだ…悪い夢でも見たの

か?」

悪い夢だったらいい

でもこれは夢であって夢じゃない

「夢だよ…夢だけど…違うんだ…」

「どんな夢だったんだ?」

「見た…見ちゃったんだ…あの先を

…見たくなかったあれを…見ちゃっ

たんだ…」

「そうか…見れたのか…」

「僕は…こんなこと…知りたく…な

かった…」

堰を切ったみたいに溢れてくる涙

「寒気がする…こんなこと…こん

なひどい…」

言葉にならない

「頑張ったな…君は勇気がある…」

それを聞いた途端

叫ぶように僕は泣いていた



(過ぎ去った日々がどこまで僕を

追いかけて打ちのめす余地が

あるんだろうか?)



余地はあったのだ

それも

決定的なものとして

こんなおぞましい形で



慟哭の中と激しい悪寒が

長いこと僕を苛んだ

そしてそれらが

少しずつ和らいでいくのを

彼の腕の中で感じていた
















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