失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「もう…秘密じゃ…ないんだね…僕

と兄貴のこと…親父は…なにもかも

…知ってた…のか…バカだね…僕…

バカだよ…僕たちが…!」


ものすごい怒りが襲ってきた

苦しんだから

死ぬほど苦しんだから

この孤独で道を誤って

これでクスリ漬けになって…

泣いて

狂って

壊れて

失って



殺意が生まれた



誰を殺したいのかもわからないけど

誰も憎めなくて

みんな被害者で

でも僕はお前らに言いたい



あんまりだ

僕を…返せ…!

僕を……



「それで…全部か?」

彼が僕に声をかけるまで

怒りで僕は彼に抱かれていることを

すっかり忘れていた



「うん…それで…全部」



いま…殺意で頭の中が

いっぱいになってる



「全員…皆殺しにしたい」

僕はつぶやいた

「人生を返して欲しい」

「私も…か」

あなた…を?

そう…兄をだまして地獄に陥れ

僕を脅してレイプした

身体も心も壊されて

恐怖で縛り付けられて



でも

あなたは…



「ううん…あなたはもう処刑済みだ

から」



潰れて切られた足首から先と一緒に

彼に対する僕の怒りは

本当に消えてしまったみたいだった





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