失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「……う…うそでしょ?」
「ウソじゃない…末期だ…」
なにを言ってるの?
「だ…ダメだよ…そんな…」
「もって…あと半年だって」
「ウソだあああっ!」
僕は受け入れられない
そんなこと
信じない
「ウソって言ってよ!」
「落ち着いて聞いて」
「ウソだ!」
「お願いだから…聞いて」
「いやだよ!…そんなの…いやだ」
椅子から立ち上がった僕は
思わず後ろを向いてた
もう兄のことを見られなかった
ごめん
これでも自分で立ってられる?
あなたとした約束に
僕は耐えられない
こんなことってあるの?
こんなことって
「こん…な…に…」
そのとき兄が
震える声で呟くのが聞こえた
「こん…なに…愛されてたの?」
泣いてる
兄が…いま…
振り返ると
兄が茫然と僕を見ていた
涙を流して