失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
ダメ…なんだな…もうなにもかも
気づかれてる
思い通りになんかなりはしない
当たり前だ
こんなに愛しいんだから
なにも隠せやしない
こんな崩壊の中で
何にすがれば耐えられるんだろう
愛しい人が奪い去られるときに
僕は何を耐えたら
いいんだ
兄は幸せだと言った
では僕は…?
神さま僕は
もうあなたに見放されたのかな
僕からどれだけ奪えば
あなたは気が済むんだ?
兄はあなたに連れ去られ
あの人も去って行った
あなたは僕をどうしたいんだ?
どれだけ悲しみに耐えられるか
試してるのか?僕を
神さま…と心で呟きながら
その存在に対して僕は
激しい怒りを感じ始めた
そうだ
そのとき僕はひとつの方法を
思いついた
僕だけが兄を愛してたんだ
そう…それは僕の片思い
この思いは消せはしない
だけどそれなら
僕だけが罪を担うんだ
どうせ兄の記憶は消えてしまった
それなら嘘もほんとも
もう区別なんかつかない
兄貴にも
僕にも
だって現実に僕は
もう片思いなんだから
それなら許してくれるでしょ?
ねえ…残酷な神さま