失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「君も苦しんだんだね…よく還って
これたね…薬物は抜けるのが本当に
大変なのに…」
先生はいたたまれないような
顔になっていた
兄だけでなく弟まで…
信じ難いような事実
僕は申し訳ない気持ちになった
救われた話をしたかった
「僕にも助けてくれた恩人がいるん
です…兄にとってのあなたのような
…彼がいなかったらやはり僕も死ん
でたでしょう…」
もう…あの人はここにはいないけど
でもその話で先生の顔が少し和んだ
「きっと…君もその人にあげたんだ
よ…大事ななにかをね…僕が君のお
兄さんからもらったみたいに」
先生はフッと微笑んだ
「大変な経験だったと思うけど…君
たち兄弟は…強いんだね…うん…魂
が強いんだろうな…」