失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



そして僕は数日後

また彼の前に座っていた



「元気だった?」

屈託ない表情で彼が訊く

「うん…まあまあ…かな」

「そうか…良かった」



前回会ったときより照れがある

あんな電話…後からじわじわきて

参った

抑えていた炎が燃え上がるみたいに

数日間僕は自分の感情に

揺さぶられ続けた

でもそんな中で幸せだった



なにかがつながってる

それがとても嬉しくて



「回りくどい話は無しでいい?」

彼が僕に確認するように訊く

「うん…単刀直入でいいよ…」

時間はない

いろいろな意味で

「じゃあ…驚かないで聞いて」

「うん…わかった」

僕がうなづきながらそう言うと

ほんの少しの間の後に彼は言った

「君が…欲しい」

「えっ…?」

一瞬

なにを言われたか

聞き間違ったと思った

「驚いたろ?」

彼は笑った








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