失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「ああ…お疲れ…いただきます」
引越し初日も夜になり
近くのコンビニで弁当を買い
部屋で待っている彼と一緒に
遅めの晩御飯を食べた
とても不思議な気分だった
「明日から僕がご飯作るから」
「うん…よろしく頼むね」
「家で母さんが煮物と炒め物の作り
方を伝授してくれたよ…ああ…あと
味噌汁も」
「お茶くらいは淹れるよ」
「ありがと…でも出来ることはやっ
てもらうからね」
「ああ…任せてよ」
細かい生活のことをあれこれ話す
病院の生活とはかけ離れた暮らし
彼が不便じゃないか気を遣う
それが楽しい
「時間が許す限り…君といろいろ話
したいんだけど」
「うん…僕も話したい」
でも…過去のことは話せない
気をつけなければ…と思った