失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
遠くで何かが聞こえてる
なんだろう…
眠すぎて朦朧としている
聞いたことある音だよね
そう思いながら不意に現実に戻った
いつもの通りいつの間にか寝ていた
携帯が鳴っている
こんな時間に
深夜と明け方の間の
いちばん暗い時間だった
ハッと我に返った
病院からだ
それしかない
慌ててテーブルの上の携帯を取る
母からだ
それは多分彼のことだろう
思った以上に手が震えた
「なんかあった?」
「お兄ちゃんが痙攣の発作が出て」
「すぐ行くよ」
「早く来て…危ないかも知れないっ
て…先生が覚悟したほうがいいって
…あと…2…3日って…」
「わかった…母さん…大丈夫?」
「うん」
「じゃ…出るから」
深夜タクシーに電話する
病院で教えて貰ってた
この時間がいちばん
向こう側に近いから…と