失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
落ち着いてる彼の横に座り
眠っている顔を母のように
眺めている
ほんとだ
信じがたいくらい
優しい気持ちになれる
生きていてくれればいい
母は以前兄にそう言った
でもその条件さえ今はもう無い
死さえ
許されてるんだね
そうだね
生きなきゃいけないのは
苦しくてツラい
死を許されたら…
生きていくのがもう少し
楽でいれるかも
いつも兄は僕の先に立つ
(お前に楽に生きて欲しいんだよ)
そう言ってるみたいに
こんな風に意識さえ無くしても
僕になにか大事なものを
与えようとしてくれる
記憶すら無くしても
僕をそのまま愛してくれたように