失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「この教会にまた来れるって…思っ
てなかった…」
「なんでだ?」
僕はあの時の不良神父の話をした
「ああ…そりゃ神父の言う事わかる
わ…オレもお前の兄貴に会ってなか
ったらそう言ったかもな…でもオレ
はあん時のお前の兄貴からは弟を大
事にしてることしか感じなかったし
な…言ってみれば…例外中の例外っ
ていうか…そんなレアケースの懺悔
なんて聞かされる神父が可哀そうだ
わ」
「うん…そのあとで僕は神父さんの
感じてた怒りが僕の中にもあるって
こと…わかったから…どちらも間違
いじゃなかったって…今は思えるん
だ」
「どっちにしても…つくづく二元論
じゃ語れない話だわ…善悪の区別が
霞んでよく見えねぇ」
「そんなこと言ってくれんの…お前
くらいだよ…ありがとう」
「あの人は…どう思ってるんだろう
な…ほら…あそこで見てるあの人」
ヤツが指さしたのは
十字架の上のイエスだった
(君は私と愛を知る旅をした)
突然僕の耳に
若い男の声が聞こえた