失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「お前がいま…すごく辛いのは解る
お前が誰と付き合おうと好きにした
らいい…だけどあの男は…クスリだ
けはやめてくれ…やめてくれ…って
いうかお前…やってないよ…な?」
ヤツの問いに僕がウソをつけば
それで済んだ
やってないよ
心配するな…と
でもなぜか僕はそれが出来なかった
僕はヤツの問いに
黙りこんでいた
「…なに…黙ってんだよ」
ヤツの声から余裕が消えた
「やってないんだろ?」
問い詰められた僕は
なんの言葉も出せなかった
急に今までのすべての心の負担が
頭の中でフラッシュバックした
罪悪感…怒り…悲しみ…秘密…絶望
そしてあの神父の顔
それがなぜか父親の顔と重なった
なぜ…僕たちに普通の暮らしを
神様はくれなかったんだ
こんな大事な友達にすら
打ち明けられない十字架を背負って
これからも耐えて生きるのか?
あの男も
クスリも
わかってる
お前が正しいんだ
僕は腐り始めてる
それでもこの地獄の中で
生きているだけでいいって
僕を許してはくれないのか?
そう思ったとき
あまりの辛さに
いつの間にか僕の目から
涙が溢れていた